「転職でもっと稼ぎたいけど、年収交渉なんて失礼じゃないか」「何を根拠に希望額を言えばいいかわからない」——こうした不安から、交渉せずに提示額を受け入れてしまう転職者は多いです。
しかし、パーソルキャリアが発表したdoda「転職前後の年収変動レポート」によると、転職後に年収が増加した人の割合は60.4%にのぼります。さらに、ITエンジニアを対象にした年収交渉に関する実態調査(2026年2月、転職経験者393名対象)では、年収交渉を経験した人の90.8%が年収アップを実現しています。遠慮せずに、正当な根拠を持って希望を伝えることが、年収アップへの近道です。
年収交渉の基本原則
年収交渉で押さえておきたい大原則が3つあります。
原則1:交渉は内定後のタイミングが基本
面接中(特に一次・二次面接)での年収交渉は「条件だけ気にしている人」と思われるリスクがあります。交渉は内定通知の後、「条件面のご確認をさせてください」という形で行うのがベストです。
原則2:希望額には必ず根拠を示す
「もっと欲しい」では通りません。「現職での年収○○万円と、今回の転職で期待できる業務量・責任の増加を考慮すると、○○万円が希望です」のように、論理的な根拠を添えます。
原則3:転職エージェント経由なら代行してもらう
転職エージェント経由の場合は、年収交渉をエージェントに代行してもらうのが最も有利です。直接言いにくいことも、エージェントが「応募者の現状況と期待値」を客観的に伝えてくれます。
年収交渉の根拠の作り方
希望年収を伝える際の根拠は「市場価値」と「現職の年収」の2軸で構成します。
根拠①:現職の年収を基準にする
最もシンプルかつ説得力があるのは「現職での年収」を基準にした交渉です。
「現在の年収は○○万円です。今回の転職では、現職より責任の範囲が広がる・業務量が増えると認識しているため、○○万円をご検討いただけますか」
現職年収を上回る水準をお願いする理由が明確であれば、企業側も検討しやすくなります。在職中に活動していれば給与明細や源泉徴収票をすぐ用意できるため、この根拠は在職中の転職活動で特に効果を発揮します。
退職してから転職活動はあり根拠②:転職市場の相場を調べる
自分のスキル・経験・職種での市場相場を把握しておくことも重要です。
調べ方:
- doda「年収診断」(無料):職種・経験年数から平均年収を確認
- マイナビ転職「転職活動の年収相場」:業種・職種別の相場データ
- 転職エージェントに「私のスキルで市場相場はどのくらいか」を直接聞く
「○○職の市場相場が○○万〜○○万円であることを調べた上で、○○万円を希望しています」という伝え方は根拠が明確です。
根拠③:実績・スキルの独自性
市場相場より高い年収を狙う場合は、「なぜ自分は相場より高い価値があるか」を説明できる必要があります。
- 特定の業界・顧客での実績(「○○業界での営業経験10年・顧客単価○○万円の案件を多数クローズ」)
- 希少なスキルの組み合わせ(「財務知識×英語×事業開発経験」のような掛け算)
- 具体的な成果数値(「担当売上を3年で1.5倍に拡大」)
年収交渉の具体的な伝え方
直接交渉する場合(最終面接・内定通知後)
内定通知の連絡をもらった際に、「条件面について確認させてください」と切り出します。
「ありがとうございます。ひとつ確認させてください。ご提示いただいた年収について、現在の年収が○○万円であることと、今回の業務ではこれまでより幅広い役割を担うと理解していることを踏まえ、○○万円でご検討いただくことは可能でしょうか」
金額は「○○万円〜○○万円」と幅を持たせずに、「○○万円」と1点で示す方が交渉しやすいです。
エージェント経由の場合
内定通知後にエージェントから連絡が来たタイミングで、「○○万円を希望していると伝えてもらえますか。根拠は現職の年収○○万円と、今回の業務範囲の拡大です」と伝えます。
エージェントは採用担当との継続的な関係を持っているため、直接交渉より通りやすい場合が多いです。
注意すべきポイント
希望額が高すぎると内定取り消しになることも
あまりにも相場から乖離した金額(「現職の年収より500万円以上高い」など)を希望すると、「現実認識がない人物」と判断される場合があります。市場相場から大きく外れた要求は避けましょう。
複数回の交渉は逆効果
一度断られてから「では○○万円は?」と再交渉するのは印象を悪くします。最初から「譲れない最低ライン」と「理想の金額」を決めておき、一度のやり取りで結論が出るよう準備します。
固定給と変動給の内訳を確認する
「年収○○万円」という提示の中に、固定給・賞与・各種手当が混在している場合があります。特に歩合制・インセンティブがある会社では、「固定給はいくらか」を必ず確認しましょう。
よくある質問
Q. 年収交渉したら内定が取り消されますか?
正当な根拠を持った交渉で内定が取り消されるケースはほぼありません。企業もある程度の交渉を想定しています。ただし、相場を大幅に上回る要求や、明らかに失礼な伝え方は避けましょう。
Q. 現職の年収を正直に伝える必要がありますか?
正直に伝えることを推奨します。現職の給与明細や源泉徴収票の提出を求められる企業もあります。虚偽の申告が後から判明した場合、信頼関係に深刻なダメージを与えます。
Q. 年収アップより先に確認すべき条件はありますか?
「年収の中身(固定・賞与・手当の内訳)」「昇給の仕組みと頻度」「残業時間の平均(残業代は固定か別途か)」を確認しましょう。提示年収が高くても、残業が月80時間で固定残業代が含まれているケースでは、時給換算で現職を下回る場合があります。
Q. 年収交渉が苦手で、切り出す自信がありません。どうすればいいですか?
前述のITエンジニア対象調査でも、交渉をためらう理由の1位は「印象が悪くなるのではという不安」でした。自分で切り出すのが不安な場合は、エージェント経由での代行交渉を最優先の選択肢にしましょう。エージェントに「金額の話は代わりに伝えてほしい」と依頼するだけで、直接交渉のハードルを避けられます。
Q. 未経験の職種に転職する場合も年収交渉はできますか?
可能ですが、根拠の作り方が異なります。未経験職種では「現職の年収」を根拠にしにくいため、前職で培った再現性のあるスキル(マネジメント経験、語学力、業界横断で使える専門知識など)を根拠にしましょう。ただし、未経験分野では大幅な年収アップは狙いにくいため、入社後の昇給制度を確認する方が現実的な場合もあります。
今日から準備する年収交渉
- 交渉のタイミングは内定後。面接中の交渉は避ける
- 「現職の年収」「市場相場」「独自の実績」の3つを根拠にする
- 転職エージェント経由なら代行交渉を依頼する
- 金額は幅を持たせず、1点で具体的に示す
- 固定給・賞与・手当の内訳を必ず確認する
次の一歩として、まず自分の現職年収と市場相場をdodaの年収診断などで調べ、根拠となる数字を手元に用意しておきましょう。




