退職後に配偶者や親の扶養へ入るか、失業手当を受け取るか。両方を同時に選べるのか、調べるほど分からなくなる方も多い論点です。健康保険の扶養では、失業手当は「収入」として数えられます。判断の基準は1日あたりの金額で、ラインは3,611円です。扶養に入れる条件、外れてでも受給したほうが得かを調べる計算の手順、待期期間を使った手続きの順番を整理します。
分かれ目は基本手当日額3,611円です
日本年金機構は、被扶養者の収入について「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます」と案内しています。失業手当は所得税や住民税では非課税ですが、健康保険の扶養では収入に算入されます。
判定に使うのは年収ではなく1日あたりの金額です。同機構は「給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします」としています。3,611円以下なら失業手当を受け取りながら扶養に入れ、3,612円以上の支給が始まった場合は扶養削除の届出が必要です。
自分の基本手当日額は、ハローワークで受給資格が決定したときに交付される「雇用保険受給資格者証」または「雇用保険受給資格通知」に記載されています。扶養の届出でもこの写しを添付します。
扶養に入れるかどうかの早見表【2026年版】
| 状況 | 健康保険の扶養 |
|---|---|
| 基本手当日額3,611円以下 | 受給中も扶養に入れます |
| 基本手当日額3,612円以上 | 支給開始時点で扶養から外れます |
| 待期7日間 | 収入要件を満たせば認定が可能です |
| 給付制限期間中 | 支給がないため入れる運用が一般的(加入先へ要確認) |
| 受給を終えた後 | その後の年収見込みが要件内なら再び入れます |
年間収入の要件そのものは130万円未満で、60歳以上または障害者の場合は180万円未満です。19歳以上23歳未満の方は、令和7年10月1日以降150万円未満に変わりました(配偶者を除く)。同一世帯なら被保険者の年間収入の2分の1未満であること、別居なら被保険者からの援助による収入額より少ないことも条件です。
180万円・150万円の区分には、公式な日額換算のラインが示されていません。該当する方は自分で割り算した数字で判断せず、加入先の健康保険に確認してください。健康保険組合が独自の認定基準を設けている場合もあります。
扶養を外れても受給したほうが得か調べる計算方法
基本手当日額が3,612円以上なら、受給を選ぶと国民健康保険と国民年金の保険料を自分で負担します。比べるのは次の2つです。
- 受け取れる総額=基本手当日額 × 所定給付日数
- 自分で払う額=受給期間中の国民健康保険料 + 国民年金保険料
基本手当日額5,000円・所定給付日数90日の方なら、受け取れる総額は45万円です。この3か月分の保険料合計が45万円を超えることは通常ありません。日額が3,612円をわずかに上回る水準でも、受給総額が上回るケースが多くなります。
精度を上げるには、国民健康保険料を市区町村の窓口で試算してもらいます。保険料は前年所得と世帯構成で決まるため、同じ日額でも差が出ます。国民年金には失業を理由とする特例免除があり、日本年金機構によると、退職した本人の前年所得をゼロとみなして審査されます。所得基準で通常は対象外になる方でも、免除や納付猶予を受けられる可能性があります。
厚生労働省によると、令和8年8月1日からの基本手当日額は、下限が2,562円、上限が29歳以下7,450円・30歳から44歳8,270円・45歳から59歳9,110円・60歳から64歳7,830円です。3,611円というラインは下限に近い水準のため、フルタイム勤務が長かった方は3,612円以上になることが多くなります。
待期期間を使って扶養に入るときの手順
令和7年4月1日以降に自己都合で離職した場合、給付制限は原則1か月です。待期7日間と合わせると、支給開始まで1か月以上の空白があります。この間は失業手当の収入がないため、いったん扶養に入り、支給開始に合わせて外れる選択ができます。
手続きは次の順番で進めます。
- 退職後すぐ、配偶者や親の勤務先を通じて被扶養者の届出を出します(事実発生から5日以内に事業主経由で提出)
- ハローワークで求職の申込みをし、受給資格者証または受給資格通知を受け取ります
- 基本手当日額が3,612円以上なら、支給が始まる前に扶養削除の届出を出します
- 国民健康保険への加入を市区町村の窓口で手続きし、国民年金の切替が必要かを確認します
扶養の届出も削除の届出も、自分ではできません。被保険者となる方の勤務先を経由します。削除が遅れると、要件を満たさなくなった日に遡って資格が取り消される場合があるため、支給開始の見込みが立った時点で早めに相談してください。
よくある質問
Q. 失業手当は非課税なのに、なぜ扶養の収入に入るのですか?
税金と健康保険で収入の数え方が違うためです。所得税・住民税では失業等給付は非課税ですが、健康保険の被扶養者認定では、日本年金機構が雇用保険の失業等給付を収入に含めると明示しています。
Q. 給付制限の1か月間だけ扶養に入ることはできますか?
支給がない期間は収入要件を満たすため、認められる場合があります。日本年金機構は待期期間中の認定を可能としていますが、給付制限期間の扱いは明記していません。加入先の健康保険へ事前に確認してください。
Q. 受給が終わったら扶養に戻れますか?
戻れます。受給が終われば失業等給付の収入がなくなるため、その後の年収見込みが要件内であれば再び認定を受けられます。受給が終了したことを示す書類の提出を求められることがあります。
Q. パートで働きながら扶養に入る場合、判定はどう変わりますか?
令和8年4月1日から、労働条件通知書や雇用契約書に記載された賃金から見込まれる年間収入で判定する取り扱いが始まりました。日本年金機構によると、年間見込みが130万円未満で他の収入が見込まれない場合、原則として被扶養者に該当するものとして扱われます。シフト制で労働時間が定まらない場合や契約期間が1年未満の場合は対象外です。
Q. 加入先から「失業手当を受ける予定があるなら扶養に入れない」と言われました。
健康保険組合は独自の認定基準を設けている場合があります。日本年金機構や協会けんぽの基準がそのまま適用されるとは限らないため、加入先の案内に従ってください。
判断の前に確認しておく3つの数字
- 雇用保険受給資格者証に記載された基本手当日額が、3,611円以下か3,612円以上か
- 受け取れる総額(基本手当日額×所定給付日数)と、受給期間中に自分で払う保険料の見込み額
- 扶養の年間収入要件(130万円/180万円/150万円)と、被保険者の年収の2分の1未満という条件
まずは受給資格者証の基本手当日額を見るところから始めてみてください。3,611円以下なら両立でき、超えるなら受給総額と保険料を並べて比べる、という順番で迷いが減ります。
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