休職や退職を考えたとき、いちばん先に知りたいのは「傷病手当金で毎月いくら入るのか」という現実的な数字ではないでしょうか。給与の3分の2という説明は広く知られていますが、実際に振り込まれる額は端数処理の順番や加入期間の長さで変わります。この記事では、全国健康保険協会(協会けんぽ)が公表している計算式そのものを使って、標準報酬月額ごとの日額と月額、退職後に手元へ残る額の違い、家族の扶養に入れるかどうかの境界線まで整理します。
傷病手当金の金額を出す計算方法【3ステップ】
全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金|給付と手続き」によると、1日あたりの支給額は次の3ステップで決まります。
- 支給開始日以前の継続した12か月間について、各月の標準報酬月額を平均する
- その平均額を30で割る(10円未満は四捨五入)
- 出た金額に3分の2を掛ける(1円未満は四捨五入)
協会けんぽが示している計算例で確かめます。標準報酬月額が16万円の月が6か月、18万円の月が6か月なら、平均は17万円です。17万円を30で割ると5,666.6…円ですが、10円未満を四捨五入して5,670円になります。この5,670円に3分の2を掛けた3,780円が、1日あたりの支給額です。
端数処理は「先に10円未満、あとで1円未満」の順番です。17万円÷30×2/3を電卓でそのまま計算すると3,777円になり、公式の3,780円と3円ずれます。30日分では90円の差になるため、早見表を作るときは必ず2段階で処理してください。
加入12か月未満なら「32万円」との低い方で計算します
入社してから1年経たないうちに休職した場合、平均を取るための12か月分がそろいません。協会けんぽはこのケースについて、①支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額、②標準報酬月額の平均額(支給開始日が令和7年4月1日以降の方は32万円、令和7年3月31日以前の方は30万円)の、いずれか低い額を使うと定めています。
つまり月給が高い人でも、加入して間もない時期であれば32万円を上限として計算されます。標準報酬月額32万円で計算した場合の日額は7,113円です。
給与が出ている日は差額だけの支給になります
協会けんぽの説明では、給与が支払われている間は傷病手当金が支給されません。給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合に限り、その差額が支給されます。休職中に給与の一部が支給される制度がある会社では、想定より振込額が小さくなる点に注意してください。
支給が始まるのは、連続して3日間の待期の後、4日目以降で仕事に就けなかった日からです。この待期3日間には、有給休暇や土日祝などの公休日も含まれます。
標準報酬月額別の支給額 早見表【2026年版】
上の計算式をそのまま当てはめた早見表です。金額は編集部が協会けんぽの公式計算式(10円未満四捨五入 → 1円未満四捨五入)で試算したもので、公式が公表している一覧表ではありません。
| 標準報酬月額 | 1日あたりの支給額 | 30日分の目安 |
|---|---|---|
| 16万円 | 3,553円 | 106,590円 |
| 17万円 | 3,780円 | 113,400円 |
| 20万円 | 4,447円 | 133,410円 |
| 22万円 | 4,887円 | 146,610円 |
| 24万円 | 5,333円 | 159,990円 |
| 26万円 | 5,780円 | 173,400円 |
| 28万円 | 6,220円 | 186,600円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 |
| 32万円 | 7,113円 | 213,390円 |
| 36万円 | 8,000円 | 240,000円 |
| 41万円 | 9,113円 | 273,390円 |
傷病手当金は「仕事に就けなかった日」に対して日単位で支給される給付です。上の「30日分の目安」はあくまで日額を30倍した参考値で、実際の振込額は支給対象になった日数によって上下します。
この表は協会けんぽの計算式にもとづく試算です。勤務先が健康保険組合に加入している場合は、独自の付加給付が上乗せされるなど取り扱いが異なることがあります。自分の標準報酬月額と支給見込み額は、加入先の健康保険に確認してください。
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。令和4年1月の改正で、途中に就労できた期間があってもその分は日数に数えず、通算で1年6か月まで受け取れる仕組みになりました。
退職後にもらう場合、額面は同じでも手元に残る額が変わります
退職後も継続給付の条件を満たせば傷病手当金を受け取れますが、このとき計算式が変わるわけではありません。基礎になるのは在職中に決まっていた標準報酬月額なので、日額は在職中と同じです。
変わるのは支出の側です。在職中は健康保険料と厚生年金保険料を会社と折半していますが、退職後は自分で選んだ制度の保険料を負担します。健康保険は任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者の3択で、任意継続を選ぶ場合は資格喪失日から20日以内の申請が必要で、保険料は全額自己負担になります。年金についても、退職日の翌日から14日以内に国民年金第1号被保険者への切替が必要です。
国民年金には失業による特例免除があります。日本年金機構「国民年金の加入、保険料免除・納付猶予制度のご案内」によると、退職した本人の前年所得をゼロとみなして免除・納付猶予の審査を受けられます。承認されるかどうかは審査次第ですが、離職票や雇用保険受給資格者証を持って市区町村の窓口に相談する価値はあります。
日額7,113円(標準報酬月額32万円)なら30日で213,390円が振り込まれますが、退職後はここから健康保険料と国民年金保険料を自分で払い出します。振込額だけを見て生活費を組むと、後から保険料の請求で足りなくなるおそれがあります。
日額3,612円以上だと家族の扶養に入れません
退職後に「家族の健康保険の被扶養者になれば保険料がかからない」と考える方は多いのですが、傷病手当金を受けている場合はここに落とし穴があります。
日本年金機構「家族を被扶養者にするときの手続き」は、被扶養者の収入に「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます」と明記しています。そのうえで、雇用保険等の受給者については日額3,611円以下であれば収入要件を満たすとしており、3,612円以上の支給が始まった場合は扶養削除の届出が必要としています。
この基準を早見表に当てはめると、境界がはっきり見えます。
- 標準報酬月額16万円 → 日額3,553円。3,611円以下なので収入要件を満たす水準です
- 標準報酬月額17万円 → 日額3,780円。3,612円以上となり、扶養からは外れる水準です
標準報酬月額17万円は月収でいえば17万円前後の水準で、決して高い給与ではありません。傷病手当金を受け取りながら家族の扶養に入るという想定は、多くの人にとって成り立たないことになります。退職後の健康保険は、任意継続と国民健康保険のどちらが安いかを試算して選ぶ流れになります。
健康保険組合では、協会けんぽや日本年金機構の基準と異なる独自の運用を設けている場合があります。扶養に入れるかどうかの最終判断は、家族が加入している健康保険が行います。手続きの前に必ず加入先へ確認してください。
よくある質問
Q. 自分の標準報酬月額はどこで確認できますか?
給与明細の健康保険料・厚生年金保険料の欄から逆算できるほか、勤務先の給与担当者に聞くのが確実です。加入先が協会けんぽであれば、協会けんぽの窓口でも確認できます。
Q. 待期の3日間にも傷病手当金は支給されますか?
支給されません。連続する3日間の待期が完成した後、4日目以降で仕事に就けなかった日が支給の対象です。待期の3日間には有給休暇や土日祝などの公休日も含まれるため、休み始めのタイミングによっては待期が早く完成します。
Q. 有給休暇を使った日はもらえますか?
給与が支払われている間は傷病手当金が支給されません。ただし支払われた給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。
Q. 賞与(ボーナス)は計算に含まれますか?
計算に使うのは標準報酬月額の平均額であり、賞与額をそのまま足して計算するものではありません。自分の標準報酬月額がいくらで登録されているかは、加入先の健康保険に確認してください。
Q. 支給期間の1年6か月はいつから数えますか?
支給を開始した日から通算して1年6か月です。令和4年1月の改正により、途中で就労できた期間があってもその分は日数に含めず、通算でカウントされます。
Q. 健康保険組合に加入している場合も金額は同じですか?
協会けんぽが示す計算方法が基本になりますが、健康保険組合によっては独自の付加給付が上乗せされることがあります。実際の支給額は加入先の健康保険に確認してください。
金額を確定させるために今日確認する3つのこと
- 直近12か月分の給与明細から標準報酬月額を確認し、平均額を出す(12か月未満なら32万円との低い方)
- 平均額÷30(10円未満四捨五入)→ ×2/3(1円未満四捨五入)の順で日額を計算し、療養見込み日数を掛けて総額の見当をつける
- 退職を伴う場合は、健康保険料と国民年金保険料の自己負担額を日額から差し引いて生活費を組み直す
- 日額が3,612円以上になる見込みなら、家族の扶養に入る前提は外して任意継続と国民健康保険を試算する
傷病手当金は「およそ給与の3分の2」という感覚のまま計画を立てると、保険料の自己負担分だけ想定が狂います。まずは標準報酬月額という1つの数字を確定させることが、療養中のお金の見通しを立てる出発点です。体調が思わしくない状態が続いているときは、手続きの前にまず医師に相談してください。
傷病手当金は退職後ももらえる?条件と手続き 社会保険給付金サポートとは?仕組みと選び方を解説 社会保険給付金サポートおすすめ比較|5社の料金と選び方 退職後にもらえるお金一覧|失業手当だけじゃない 失業手当はいくらもらえる?計算方法と給付日数



