「転職先が決まったので、失業手当はもう関係ないですよね」——そう思ってハローワークへの報告を後回しにし、受け取れるはずのお金を逃してしまう方がいます。早く再就職が決まった人には、残った失業手当の60〜70%をまとめて受け取れる「再就職手当」が用意されています。金額は数十万円になることも珍しくありません。受け取るには8つの条件があり、手続きの順番を間違えると1円も支給されないケースもあります。厚生労働省とハローワークの一次情報をもとに、金額の計算方法・条件・申請期限を整理しました。
再就職手当はいくら?計算方法と2026年8月改定の上限額
再就職手当の額は、次の式で決まります。
基本手当日額 × 所定給付日数の支給残日数 × 給付率(60%または70%)
給付率は、就職日の前日までの失業認定を受けたあとに残っている日数で変わります。ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」によると、区分は次の2段階です。
| 就職日前日時点の支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上3分の2未満 | 60% |
厚生労働省のリーフレットには、基本手当日額4,000円の方を例にした計算が3パターン示されています。
- 所定給付日数90日・給付制限期間中に就職(残日数90日=70%)→ 4,000円×90日×70%=252,000円
- 所定給付日数270日・受給資格決定日以後50日目に就職(残日数228日=70%)→ 4,000円×228日×70%=638,400円
- 所定給付日数270日・受給資格決定日以後100日目に就職(残日数178日=60%)→ 4,000円×178日×60%=427,200円
同じ基本手当日額でも、就職が50日遅れるだけで約21万円の差が出ます。1円未満の端数は切り捨てで計算されます。
再就職手当の計算に使う基本手当日額には、失業手当そのものの上限額とは別の上限が設けられています。厚生労働省のリーフレット(令和8年8月1日改定)によると、離職時の年齢が60歳未満の方は6,745円、60歳以上65歳未満の方は5,454円が上限です(令和9年7月31日までの額)。改定前は6,570円・5,310円でした。毎年8月1日に改定されるため、古い金額を掲載した解説記事には注意してください。
失業手当そのものの基本手当日額の上限は、29歳以下7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円・60〜64歳7,830円(令和8年8月1日から)で、再就職手当の上限とは数字が異なります。日額の高い方ほど、再就職手当の計算では上限に頭を抑えられる点を見込んでおきましょう。
再就職手当をもらえる8つの条件
厚生労働省・ハローワークのリーフレット「再就職手当のご案内」には、次の8つをすべて満たす必要があると明記されています。
- ①受給手続き後、7日間の待期期間の満了後に就職、又は事業を開始したこと
- ②就職日の前日までの失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- ③離職した前の事業主に再び就職したものでないこと(資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがある事業主も含む)
- ④給付制限がある方は、求職申込みをしてから待期期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること
- ⑤1年を超えて勤務することが確実であること
- ⑥原則として、雇用保険の被保険者になっていること
- ⑦過去3年以内の就職について、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
- ⑧受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
特につまずきやすいのが⑧です。ハローワークで求職申込みをする前に内定が出ていた場合、その会社への就職は対象外になります。退職前から転職活動を進めていた方は、内定日と受給資格決定日の前後関係を必ず確認しておきましょう。
2025年4月から、対象の教育訓練を受けることで自己都合退職の給付制限が解除される仕組みが始まりました。リーフレットの注記によると、この解除を受けた場合でも、待期期間満了後1か月の期間内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。給付制限が消えれば就職経路も自由になる、とは限りません。
給付制限がない方(倒産・解雇等による離職など)は、待期期間の7日が経過したあとであれば就職の経路を問われません。知人の紹介や求人広告への応募で決まった場合も対象になります。
所定給付日数別・支給残日数の早見表
自分がどちらの給付率に届くのかは、所定給付日数ごとに必要な残日数で判断できます。リーフレット裏面の表を転記しました。
| 所定給付日数 | 60%になる残日数 | 70%になる残日数 |
|---|---|---|
| 90日 | 30日以上 | 60日以上 |
| 120日 | 40日以上 | 80日以上 |
| 150日 | 50日以上 | 100日以上 |
| 180日 | 60日以上 | 120日以上 |
| 210日 | 70日以上 | 140日以上 |
| 240日 | 80日以上 | 160日以上 |
| 270日 | 90日以上 | 180日以上 |
| 300日 | 100日以上 | 200日以上 |
| 330日 | 110日以上 | 220日以上 |
| 360日 | 120日以上 | 240日以上 |
所定給付日数90日の方なら、残り30日を切ると再就職手当は支給されません。入社日が調整できる場合は、この境界線を意識して交渉する価値があります。
訓練延長給付などの延長給付による支給残日数は、再就職手当に係る支給残日数としてはみなされません。職業訓練を受けながら就職先を探している方は、手元の受給資格者証の残日数がそのまま計算に使えるとは限らないため、ハローワークの給付窓口で確認してください。
申請の流れと見落としやすい落とし穴
支給申請書は、就職した日の翌日から1か月以内に提出します。本人が持参するほか、代理の方や郵送でも提出できます。会社に記入してもらう欄があるため、入社してすぐ人事担当者へ依頼しておくと締切に間に合います。
手続き上の急所は、就職日の前日までに失業の認定を受けておくことです。認定を受けていない日は支給残日数の計算に反映されず、給付率の判定が不利になる場合があります。入社日が決まった時点でハローワークに連絡し、認定日の前倒しが必要かどうかを確認しましょう。
再就職手当を受け取った後に離職して失業状態になった場合でも、再就職手当分を除いた残日数分を受給できる可能性があります。リーフレットにも「まずはハローワークにご相談ください」と案内されています。手当を受け取ったら残りは消えてしまう、と思い込んで手続きをやめないでください。
再就職手当を受けた方が同じ職場に6か月以上雇用され、その6か月間の賃金の1日分が離職前の賃金日額より低かった場合には、差額を補う「就業促進定着手当」を申請できます。支給額は差額に賃金支払基礎日数を掛けた額で、基本手当日額×支給残日数×20%が上限です。年収が下がる転職をした方は、6か月経過後にもう一度ハローワークを訪ねてみましょう。
よくある質問
Q. 再就職手当と失業手当は両方もらえますか?
再就職手当は、失業手当(基本手当)の残りを前倒しで受け取る性質の手当です。就職日の前日までに受給した基本手当はそのまま手元に残り、残日数分の60%または70%が再就職手当として支給されます。同じ日数分を二重に受け取る仕組みではありません。
Q. 派遣社員やアルバイトでも対象になりますか?
雇用形態の名称ではなく、条件を満たすかどうかで判断されます。1年を超えて勤務することが確実で、原則として雇用保険の被保険者になることが必要です。雇用期間が定められ契約更新が見込まれない派遣就業は、この要件に該当しないとリーフレットに明記されています。判断に迷う場合は雇用契約書を持ってハローワークに相談しましょう。
Q. 自己都合退職の給付制限中に就職が決まった場合はどうなりますか?
待期期間の7日が満了したあとの就職であれば対象になります。求職申込みをしてから待期期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが条件です。その1か月を過ぎれば、就職の経路は問われません。
Q. 再就職手当はいつ振り込まれますか?
支給申請から審査を経て振り込まれるため、入社日当日に受け取れるものではありません。審査には在職確認などが含まれ、時期は個別の状況で変わります。生活費の計画を立てるときは、入社後しばらく入金がない前提で見積もっておくと安全です。
Q. 過去に再就職手当をもらったことがあると、もう受け取れませんか?
過去3年以内の就職について再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けている場合は対象外です。事業開始にかかる再就職手当も含まれます。3年より前の受給であれば、他の要件を満たすかどうかで判断されます。
Q. 支給残日数が3分の1未満だと何ももらえませんか?
再就職手当の対象からは外れます。障害のある方など就職が困難な方については、支給残日数が所定給付日数の3分の1未満でも「常用就職支度手当」の対象になる場合があります。該当するかどうかはハローワークの個別判断となるため、窓口で確認してください。
転職が決まったらすぐ確認する3つのこと
内定が出たら、入社日を返答する前にハローワークへ一報を入れてください。支給残日数が給付率の境界にある場合、入社日を数日ずらすだけで受け取れる額が変わることがあります。あわせて、受給資格決定日と内定日の前後関係、就職日の前日までの失業認定の予定を押さえておけば、条件の取りこぼしを防げます。
- 再就職手当=基本手当日額×支給残日数×給付率(残日数が所定給付日数の3分の2以上で70%、3分の1以上で60%)
- 計算に使う基本手当日額の上限は60歳未満6,745円・60歳以上65歳未満5,454円(令和9年7月31日までの額)
- 受給資格決定(求職申込み)前に内定していた会社への就職は対象外
- 申請期限は就職した日の翌日から1か月以内。就職日の前日までに失業の認定を受けておく
- 次の一歩: 内定を承諾する前にハローワークの給付窓口で自分の支給残日数と給付率を確認する
制度の骨格は全国共通ですが、1年を超える勤務の確実性や事業主との関わり合いの判断はハローワークが個別に行います。受給資格者のしおりを手元に置き、疑問が出た時点で窓口に確認する進め方が結果的にいちばん早道です。
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